「お坊さん便」、Amazonでの取り扱い終了もLINEに鞍替えしただけ?

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今から約6年前にスタートした「よりそう(旧みんれび)」が運営する「お坊さん便」は、インターネット上でお坊さんを手配し、全ての法事や法要を一律の料金で行えるサービス。
「お寺との付き合いがない」「お布施の相場が分からない」といった現代人の声に応えるものでしたが、仏教界から「宗教をビジネス化している」と批判を受けていました。
実際、今回取り扱いを終了したAmazonで「お坊さんを派遣する」というサービスを販売していたわけですからビジネス化しています。
ただ、お坊さん便に登録しているお坊さんがいるから成り立っているサービスなわけですから、なんとも説得力に欠けるところは否めません。

サービス終了の理由は情報量の少なさと誤解

今回「お坊さん便」がサービスを終了する理由を運営会社は以下のように説明しています。
「仏事そのものが出品されたかのような誤解が生じた」
「掲載できる情報量では供養の役割を十分伝えられなかった」
「仏事のグリーフケアという価値から注目をそらし、意義や必要性に対する誤解を広めてしまう事態も発生した」

文面から察するに、やはり仏教界からの圧力に配慮した形だと推測できます。
とはいえ、このサービスを終了するのかというとそうではありません。

今後は「お坊さん便」サイトに窓口を一元化

Amazonでの販売は終了しますが、自社サイトでは変わらずサービスを提供するようです。
当たり前のことですが、Amazonに出店していればそれだけで固定費がかかります。
また、販売すれば販売した分の手数料もかかります。
持ちつ持たれつの関係でいなければならないはずの仏教界にこれ以上嫌われてまで、Amazonに出店するメリットがなかったという判断でしょう。
なにより、今回のニュースで「お坊さん便」は知名度を上げたことでしょうし、プラスに働いていると思います。

お坊さんのニーズ

ご近所・親類が集まって葬儀をあげるという習慣がほとんど無くなったと言っていい首都圏の葬式。
ある程度の人を呼んで葬儀を行う場合は、葬儀場と繋がりのあるお坊さんが来てくれます(これはビジネスではないのか不思議です)が、昨今増えてきている「直葬」と言われる形式では火葬場に行ってお骨を受け取っておしまいという場合があります。
その場合でも火葬時や自宅にお骨を持ち帰った時だけはお経を読んでほしいというニーズがあります。
その時にお坊さんをどこからどうやって呼んでいいか分からない人が多いのです。
ネットで大抵のことは調べられますから、そのままネット経由でお坊さんを呼べるニーズは今後増えることはあっても減ることはないでしょう。

お坊さんのジレンマ

宗教をビジネス化していると反発している仏教界ですが、このままでは葬儀をしないどころかお経もあげないという流れになることを地場のお坊さんは恐れています。
檀家制度はすでに崩壊し、寄付やお布施による収入は一部のお寺を除いて期待できません。
以前の記事でも書きましたが「自分が仏教徒である」という自覚のある若い人はほとんどいません。
私個人の考えですが、現状ではお経を読んでもらっても「ありがたい、これで極楽に行ける」とは思いません。
そのような流れになれば、読経からの流れであった「戒名料」という収入源もなくなってくるのは必然です。
その後の49日も1周忌もなくなります。
そして最終的に「墓もいらない」という流れになってしまうでしょう。
実際、各家庭に当たり前にあった仏壇は、ほとんどその姿を消していますから、お墓がなくなるのは時間の問題でしょう。

乱暴に言ってしまえば、登録さえしていれば読経という「仕事」が舞い込んでくる「お坊さん便」は、一部のお坊さんにとって素晴らしい販促ツールになっているはずです。
実際に利用した方の中には「また何かあればお願いします」と言って名刺を渡してきたお坊さんもいたとのことで、葬儀という場所をわきまえていては仕事がなくなるという危機感が表れている証拠です。

読経は必要か

仏教の教えを守った生活を送っているお坊さんなど私たちが済んでいる近所のお寺にはいないでしょう。
日々禁欲的な生活をし、悟りの境地を目指して修行をしておられるお坊さんならば、私もぜひ読経してもらいたいと思いますが、残念ながらそのような方は火葬場に来てくれません。

結論は人それぞれなんです。
必要な人はお経を読んでもらえばいいですし、不要だと考える人は頼まなければいい。
ただ、不要だと考える人が増えている。
不要と考える人の子供たちはやはり不要と考え、このままではお経をあげる方がマイノリティになる時代が来ます。

人のよりどころとなる宗教を否定しません。
しかしGoogleで検索すれば物事の理屈や理由が調べられる今、仏教が必要な理由やお経が必要な理由を明確に、丁寧に若い人たちに伝えていかなくてはならないのではないでしょうか。

Amazon終了後すぐにLINEでの販売を開始

別記事で詳しく書きますが、昨日2019年11月5日に「お坊さん便」をコミュニケーションアプリLINEから利用できるようになったと運営会社「よりそう」が発表しました。
これに合わせてお布施の「後払い」が可能になり、「仏事に定価を設定してほしくない」仏教界の意向にも配慮した形です。

ちなみにお布施の金額と言えば「お気持ち」という摩訶不思議なシステムによって成り立っていますが、「後払い」になったからと言って5千円や1万円でいいというわけではなく、あらかじめ最低限の金額は設定されています。
希望者は設定された金額に「上乗せして」支払うことができる。というものです。

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