急拡大するマッサージ屋「りらくる」の社長が飛び降り自殺で死亡

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11月15日、大阪府港区弁天にあるタワーマンションから飛び降り自殺を図ったとみられる男性の遺体がマンション管理会社の従業員によって発見されたと大阪府警港署が発表しました。
発見された男性は、ここ数年特殊な方法で店舗網を急拡大するマッサージ店「りらくる」の現社長、出上幸典さん39歳と確認されています。

もともとSEとして働いていた出上さんが2012年に同社に転職後、2015年に同社社長に就任しています。
社長就任までの在職期間はわずか3年という短さでした。

このことの良し悪しは分かりませんが、入社3日で部長に昇進とHot Pepperの取材で本人が話していますので、この時点で人が足りていない状態だっとことは容易に想像がつきます。

りらくるの特殊な経営方法とは

りらくる(旧りらく)は、よく言えば自由な経営手法で有名になったマッサージ店です。
60分2,980円(税抜)という格安価格を売りに急成長しました。
マッサージに必要な建物、ベッド、予約システムなどはりらくが用意し、そこで働くマッサージ師さんたちとは個人事業主として委託契約をしているのです。
要するに、雇用義務なし、社会保険なし、給与保証なし、労働時間は青天井、売上が悪いのは自分のせい、という働く側にとっては最低最悪の経営です。

これと似た手法はワタミの宅食でも使われていました。(有償で弁当を運ぶ際に本来必要な車を使用せず、個人事業主として委託している人の自家用車を使用している)

それでも集まるマッサージ師

最低最悪な条件ですが、店舗や備品の持ち出しがなく自分の空き時間を有効に使ってお金を稼げるので、リスクのない副業や個人事業主の第2の収入源として人が集まりました。

なによりマッサージ師に提示している報酬が高額だったのが大きいでしょう。

画像:りらく

しかし、いきなり怪しいのが「完全歩合制1848円~」の部分です。
実際は1,540円からスタートにも関わらず、目立つトップページにはこの金額1,848円のみが記載されており、誤解を招きます。

画像右下には「手取り52万円」という記載もあります。

 

画像:りらく

手取り52万円は可能か

最高報酬2,500円?
客から受け取る料金が2,980円なのに?
電気代と家賃と販促費差し引いたらほぼ赤字ですよ?

それはいいとして、52万円を手に入れるにはどうすれば可能なのでしょうか。
この実例の人は60代の女性、りらく歴4年、週5日勤務とあります。

りらくは朝10時から深夜2時くらいまでの約16時間営業です。
個人事業なので労働時間は関係ありませんので、昼食30分、夕食30分を差し引いた15時間働くとします。
4年の勤務で単価がどこまで上がるのか分かりませんが、こういうランクアップがある場合はほとんどランクアップしないのが定説ですので1540円とします。

わたしの家の近くにもりらくがあります。お客さんがいない時間帯は結構ありますが、週5日、毎日満員御礼状態とします。
入れ替わりがあるので1日15時間では14人が限界でしょう。
1人60分のマッサージをすると1,540円×14人=21,560円になります。
週5日勤務なので21,560円×5日=107,800円。
1か月4週間とすると107,800円×4週=431,200円です。
これだと28日分なので2日分43,120円を足すと、474,320円になりますが52万円には届きません。

仮にランクを一つ上げた時間単価1,848円にした場合は4週間で517,440円となり実例に極めて近くなります。

しかし、これはまず無理ですよ。
体力は人それぞれなので毎日15時間ずーっとマッサージできるかどうかについて否定は出来ませんが、毎日15時間ひっきりなしに客が来ないですよ。そもそも。
一緒に働く人もいるわけで、独り占めするわけにもいきませんから。

経営陣の不思議

りらくるは2009年に大阪で創業され、創業者は竹之内教博(たけのうちゆきひろ)とされています。
しかし2010年の会社設立(法人化)時の代表者は小泉智史という人物。
その小泉智史は、現在社長でも取締役でもなく構成員として名前が載っていません。

創業者たる竹之内教博は、今回自殺した出上幸典さんの入社からわずか2年後の2014年にはコッペパン専門店「こぺてりあ」を運営する会社を設立し、その翌年にはりらくを譲渡し去っています

りらくの会社概要には、出上幸典さんも竹之内教博の名前も載っていません。
その代わりに著名な経営者である伊佐治 岳生氏がいましたが。

 

画像:りらく

 

上手い話には裏がある

りらくの本社は大阪市港区弁天の大阪ベイタワー。
亡くなった出上さんが飛び降りたマンションも同じ大阪ベイタワー上層部のレジデンスとみられています。
※タワーレジデンスといっても家賃8万円台の手頃な賃貸もあります。

入社3日で部長に昇進、週5日勤務で手取り52万円。
確かに不可能なことではありません。

入社面接時に「3年後に社長にするから是非来てほしい」と創業者の竹ノ内氏に言われたそうです。
30歳くらいの野心あるサラリーマンが創業者からそう言われたら、死に物狂いで働くでしょう。
心が折れそうなときに「社長は大変なものなんだよ」と言われれば、そういうものだと思ってしまうでしょう。

自分が創業した会社を入社3年の人間に任せて、自分は去るというのはどう考えても異常です。

正社員での勤務もあぶない

ちなみに、りらくのスーパーバイザー職(店舗を巡回して助言や指摘をする人)の給与は280,000円で募集されています。

安いとはいえない給料です。

しかし実態は違うだろうと容易に想像ができます。
理由はこの画像の通りです。

 

画像:りらく

 

見えますか?
みなし残業代100,000円ですよ。

みなし残業代は営業職やベンチャーなどでは当たり前のシステムですが、ここまで強烈なものは初めて見ました。

実際の給与は180,000円ということになります。
一般的な労働時間である8時間/1日で24日/月働いた場合は、なんと。

 

時給938円です。

 

平成30年、大阪府の最低賃金は936円ですので、高校生のアルバイトと同じということになります。
しかも勤務体系が9:00~22:00の間で3勤務あるように見えますが、おそらく1人が通しで働く必要があるでしょうから、実際の時給はさらに安いでしょう。

「仕事があるだけまし」

という方もいると思います。
でも死を選ぶ前に辞めましょう。

昇進よりお金より、やはり命がもっとも大切であると私は思っています。

 

今回のりらくる社長、出上幸典さんの飛び降りの原因が何かは発表されていませんが、異常な事態であったことが想像できます。

ご冥福をお祈りいたします。

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