自宅に置いておいた家族の遺体が白骨化|捨てたわけでも埋めたわけでもないのに「死体遺棄罪」

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栃木県 死体遺棄罪で逮捕

栃木県警佐野署は3日、死亡した父親の遺体を自宅に放置したとして、死体遺棄の疑いで小島好和容疑者(49)を逮捕しました。

「あれ?死体遺棄って、山林に投棄したりゴミとして捨てちゃったりってことじゃないの?」わたしは単純に考えるとそう感じます。

今回の事件は家族の遺体を自宅に放置しただけ。
これがゴミのように廃棄・投棄されてしまう死体遺棄と同義として扱われることに疑問を感じますが、実際はどうなのか。

連絡の取れない母親も遺棄

自宅の居間では別に性別不明の白骨遺体も見つかり、連絡の取れない70代の母親とみて調べているということです。
2017年11月以降、同居していた父親(79)が自宅で死亡したにもかかわらず、遺体を1階寝室にそのまま放置していました。
それ以前に亡くなっていた母親と思われる白骨化した死体も見つかりました。

自首したため発見

発見したきっかけは容疑者自身が自首したためです。
3日未明、小島容疑者が「自宅に両親の遺体を隠してある」と栃木県警佐野署を訪れたため発覚しました。
白骨化した母親と思われる死体と共に布団をかけられた状態だったということですが、気温が上がり、臭いなどの理由で隠しきれないと考えたのかもしれませんし、両親を見かけなくなったという近所からの通報を恐れたのかもしれません。

遺体を置き去りにしたり捨てたわけでなくても遺棄

死体遺棄といえば死体損壊と合わせて殺人事件との関連がもっとも想像しやすく、山中に捨てるなどの行為を指すように感じます。
実際は今でも活発な議論がなされ、なにが遺棄でなにが遺棄でないかというのは100%確定していません。

今回の事件も年金の不正受給が目的でなく、寂しさから両親との別れが感情的にできなかったとなれば、罪状として遺棄罪になっても執行猶予になることは間違いないでしょう。

遺棄罪として問われるのは、明らかな死体遺棄(山に移動して捨てるなど)でなければ、葬儀を行うべき人間が一般的な方法で葬送を行ったかどうかという点です。

現在の日本では火葬が当たり前ですが、明治時代には火葬は禁止されていました。もし明治時代に火葬をしたら、それは(そもそも違法になってしまいますが)一般的な方法ではない社会通念上おかしい行為ということになります。

本件は亡くなってから腐敗などの過程を経て白骨化するまで自宅に安置しておくという行為が一般的ではないため、どこかに捨てたわけではないのに死体遺棄という事件になっています。
ただ、死体遺棄の控訴時効は3年となっているため、母親と思われる白骨化した遺体についての遺棄は問われないと思われます。

一般化した散骨

散骨については方々で死体遺棄ではないのか、節度をもってならOKなのかなど、いまでも多くの情報があふれています。(誤った情報も含めて)
上記のとおり、その方法が社会通念上一般的なのかどうかが大切で、平成30年となった現在、散骨という言葉は広く知れ渡り、世界的にもその葬送を選択する人が増加傾向であることから明らかに一般的な葬法であることは確実です。

あまり知られていませんが、日本でも海上自衛隊や船員など一部職業においては水葬(火葬せずに海に沈める葬送)が法的に認められています。

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隠した理由は年金の不正受給か

現在司法解剖が行われ直接的な死因を調べていますが、容疑者が無職だったことから死体を隠していたのは年金の不正受給が目的だったと推測できます。

身内が亡くなった時は、その亡くなったことを知った日から7日以内に死亡届を役所に出さなければなりません。
役所に死亡届を提出したとしても、年金事務所(または相談センター)に除籍された住民票等を提出しなければ年金が支給され続けてしまいます
※住民票コードを紐づけている(収録されている)場合は年金事務所への提出は不要。

いつかは必ずバレて、過去に支給された分の年金を返納することと合わせて罰金または懲役になるのですが、支給された年金は時効により過去5年分までしか遡れません。
わたしたちの納めた年金が不正に使われたことには憤りを感じます。

不正受給は年間2800万円にも

少し古いデータになりますが、平成25年度の会計検査院の報告によると、平成21年から平成24年の4年間で時効により不正受給された年金が消滅(戻ってこない)した事例は53例あり、その合計金額は約1億1200万円だったということです。(わたしたちの支払った年金です!)

不正受給には年金法による罰則規定(3年以下または100万円以下)が設けられていますが、そのほとんどが執行猶予、罰金のみで済みます。
そもそも不正受給する人間の多くが無職であったり、本人も年金生活だったりするため、罰金の支払い能力がないので、沙汰なしで決着という逃げ得な制度が問題なのです。

死亡届が出されたら年金も止める。
なぜ役所というものはこんな簡単な連携が出来ないのでしょうか。

もちろん死亡届すら出さない人が悪いわけですが、火葬するお金がない、埋葬する墓地がないなどの理由で死体を隠してしまう、遺棄してしまう事例が後をたちません。

周知とサポート不足 葬儀は0円でできる

亡くなった方または亡くなった方の葬儀を執り行うべき人が生活保護世帯なら火葬・葬儀の費用は0円でできます。
怪しい話ではなく、生活保護法により国から葬儀の費用が支給されるためです。

条件・自治体によって異なりますが最大20万円を超える金額が支給されますから、近年増えている直葬という通夜・告別式を行わない葬儀であれば十分賄える支給額となっています。
※支給は葬祭会社に直接支払われます。

しかし自ら情報収集をしていないとなかなか制度を認識できないばかりか、生活保護世帯であることに引け目を感じて申請しないことすらあります。
役所は社会保障費の削減に全力ですから、申請しなかったものを丁寧に「申請していませんよ」とは教えてくれません。

今回の事件、無職の容疑者が生活保護であったかどうかは分かりませんが、お金と情報がなかったために起きてしまったことだとしたら、自治体によるサポートや広報活動が不足していたことかもしれません。

※葬祭扶助が支給されるのは原則として自宅などから火葬場への搬送、火葬をして骨壺に納めるまでの費用です。

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