散骨が死体遺棄にならないたった一つの理由

散骨

遺棄と散骨

日本語の便利なところで、漢字を見ると意味がある程度わかるというところがありますよね。
遺棄も一文字ずつ見てみると「遺」はのこす・のこるという意味があります。
「棄」は捨てるという意味があります。

散骨が死体遺棄にならない理由は捨てていないからに他ならないのですが、きちんと法的に見ても散骨が遺棄ではない理由があります。

遺棄とは

遺棄とは書いて字のごとく、その場に捨て遺すということです。
法律(刑法217条)では以下のように定義されています。

老年、幼年、身体障害者又は疾病のために扶助を必要とする者を遺棄する罪である。

これはすべての人に当てはまることで極端な例を出すと、道で倒れている人を無視して通り過ぎたら遺棄罪になります。
世知辛い世の中であったり、身の危険を感じることも多い昨今、なかなか道で倒れている(寝ている)他人に声をかけるということはハードルの高い行為ですが、乱暴に解釈すればこれだけで遺棄罪になってしまいます。

危険から遠ざけることが目的

遺棄と合わせて頻繁に使われる言葉が致死、遺棄致死です。
遺棄した結果死に到ってしまったということです。
その場にのこしておいたら危険だから、最悪の場合は死に到ってしまうから助けましょう、というのが抑止力としての遺棄罪のあるべき姿です。

これを怠って遺棄した場合1年以内の懲役刑が科せられますが、保護する責任のある人が遺棄した場合は保護責任者遺棄となります。

保護責任者遺棄

通りすがりの人であっても遺棄罪が適用されるわけですから、保護すべき人であれば罪は重くなります。
保護すべき人とは、たいていは子供を育てる親や、親の介護をする子供がそれに当たりますが、実はもっと浅い関係でも保護責任を問われます。

たとえば道で倒れていたまったくの他人を看病するために自宅に招き入れたとします。
その人を自宅に置いたまま外出し、その間に亡くなってしまった場合も保護責任者遺棄致死罪が適用されてしまうことがあります。

保護責任者遺棄の場合は5年以下の懲役です。

遺棄罪に問われないためにするたった一つのこと

上記のようなことはまずないとは思いますが、助けなくても遺棄罪、中途半端に助けても遺棄致死傷罪なので、みなさんが巻き込まれないようにするために出来ることは一つです。
すぐに警察に電話しましょう。

わたし自身何度も警察に連絡していますが、たいていは「ありがとうございます」と双方から感謝されます。
警察に連絡するときはその場所の住所とその人のひととなりを伝え、安全が確保された場所であれば、警察の到着を待つ必要はありません。
これが救急車の場合、状況の説明などの為にその場にいなければなりません。

当たり前の行動ではありますが、この行動をとらないと実は違法行為だという事実を知らない人は意外といます。

死体遺棄

前置きが長くなりましたが、死体遺棄についてです。
ここまで見てきた遺棄とは少し異なり、正式には死体損壊等という刑法190条に反する行為ということになり、死体遺棄単体を指すものではありません。

死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。

問題となるのがこの条文の中の遺棄という言葉で、現在でも法律学者によって解釈が分かれている部分ですが、散骨においては無関係なのでここでは省きます。

死体損壊・遺棄における遺棄とは

ここで言う遺棄は冒頭のそれとはまったく考え方が異なり、社会通念上の常識から外れた方法で死体を放棄・処分・埋葬することを指します。
かんたんに言えば、普通ではない方法を選んで死体を処理した場合は遺棄ということになります。

すなわち普通がなにか、ということがとても重要です。

日本においてはほぼ100%の人が亡くなった後火葬されます。
したがって死体の処理として火葬することは普通のことだと言えますが、火葬以外の方法がダメ、というわけではありません。
海上自衛隊や船員など一部職業においては火葬せずに亡くなった状態のまま送る水葬が法的に認められていますし、宗教上の理由などで火葬してはいけないという場合の直葬(土葬)も禁止されているわけではありません。
そもそも約100年前までは火葬が禁止されていて土葬することが普通(ルール)でした。

よって普通ではない方法というのは、〇葬といえないものを指すと解釈するのが簡単です。
火葬せず白骨化するまで自宅に置いておく
火葬せずに山中に埋める(捨てる)
土葬せずにそのまま風雨にさらす

時代によって変わる「普通」

おぞましい話かもしれませんが、人を食べる食人種は現在でも存在します。
彼らにとってはそれが普通なわけですから、もし彼らが日本に住んでいたら法的に裁く必要があるかどうかは意見が分かれるでしょう。

こういった例は極端にしても、時代や文化、風習、人によって普通は変わります。
日本では散骨というと広義では水葬、狭義では海洋葬と呼ばれる行為が一般的で、それ以外にも樹木葬、宇宙葬が知られています。
海外では高原などで遺灰を空中に撒く風葬、未来での蘇生を希望する冷凍葬も行われていますが、冷凍葬以外は散骨と言われる行為で、まさに今、散骨が普通の葬送、普通の方法になってきている時代なのです。

散骨が遺棄事件になる理由

ここまでで気づいた方もいるかもしれませんが、粉骨という単語が出て来ていません。
一説には〇ミリ以下にしなければならないなど数字だけが独り歩きをしていますが、ここまでお読みいただいた通り、そのようなことは一切関係ありません

大切なことは普通な方法かどうかです。
社会通念上の常識から外れていないかどうかです。

骨壷(遺骨)を電車の網棚に置いてきたらそれは非常識です。
遺骨を自宅前の側溝に撒いたらそれは非常識です。
遺骨をトイレに流したらそれは非常識です。

火葬したままの遺骨を海に撒いて、人骨と分かるようなものが海岸に流れ着く行為は非常識なのです。
火葬したままの遺骨を山中に撒いて、殺人事件の被害者かもしれないと誤解を与える行為は非常識なのです。

こういった常識から逸脱した方法を散骨と呼ぶのであれば、散骨は違法行為、遺棄行為です。
そうならないために、散骨をする際にはほぼ必ずといっていいほど粉骨という工程を経てから行うことになるのです。

個人的に言えば、ミルを使用して遺骨をする必要のない粉末にすること自体が社会通念上の常識から外れている気がしています。
散骨するために粉骨は不可欠ですが、せめて人の手で粉骨したいものです。

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散骨が死体遺棄にならないたった一つの理由

散骨については方々で死体遺棄ではないのか、節度をもってならOKなのかなど、誤った情報も含めて多くの情報があふれています。
上述のとおり、その方法が社会通念上一般的なのかが大切で、平成30年となった現在、散骨という言葉は広く知れ渡り、世界的にもその葬送を選択する人が増加傾向であることから明らかに一般的な葬法であることは確実です。

非常識な手段を取らなければ死体損壊・遺棄罪になることは決してありません。
そのたった一つの理由は、散骨が一般的な葬送の方法として認知されたという事実なのです。

実際、全国47都道府県のほとんどに散骨を扱う業者(法人・個人問わず)があり、その合計は350社に届く勢いです。

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個人、宗教観、世代などで考えは全く異なると思いますが、散骨は間違いなく市民権を得ていると言って差し支えないでしょう。

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