ペットの火葬のあと
ペットを個別に火葬する人が一般的になっています。
特に都市部では8割近くが1体1体個別に火葬することを希望しています。
1体1体火葬を行った後は、ほとんどの方はペットの遺骨を引き取ることになります。
引き取った後は人のお骨と同じように法要を行ったり、自宅でしばらく供養する方もいます。
法要や供養が済むと、ペット霊園や納骨堂に納めたり散骨をすることになりますが、今回は散骨の準備としての粉骨をご紹介します。
ペットの粉骨
ペットを個別に火葬する場合、その多く(9割以上)は犬か猫ということになりますので、ここではペット=犬または猫としてお話をすすめます。
ペットを火葬すると、人と同じく骨壺に納めることが一般的で、その骨壺の大きさは子猫・子犬に利用される3寸から、コーギーやビーグル、柴犬に利用される5寸、大型犬の7寸まで大きさは異なります。
※火葬場によって骨壺が無料で用意されている所とそうでないところがありますので、事前に確認しましょう。
ペットを火葬したままの状態では、それが骨だと分かるため散骨はしない方が賢明で、粉骨をしてから散骨をすることになります。
粉骨とは遺骨を粉末状に近くなるまで砕いたりすり潰したりすることで、灰のような状態にすることを言います。
常々書いておりますが、2ミリ以下にしなければならないという決まりはありませんし、パウダー状にする必要もありません。
イワタニのミルサーに代表されるようなミル式(ブレードカッター式)の器具を使用することで、勝手にパウダー状になるだけの話です。
※パウダー状になることが悪いことではありません。
ペットの遺骨を自分で粉骨する
粉骨すると、もともと入れていた骨壺の遺骨の量と比較して半分以下の容積になります。
はじめからペットの遺骨を粉骨するつもりであれば、大きな骨壺を用意しなくてもいいでしょう。
見た目や心情を考慮する必要はありますが、熱に強い容器であれば、タッパーなどで代用してもいいと思います。
逆にこのあと紹介する方法で粉骨する場合は、あえて大きめを用意しても良いでしょう。
粉骨の方法は4種類あり、大型犬でなければペットの遺骨の量も少ないためどの方法でも問題ありません。
・袋に入れて叩く方法
・骨壺の中で押し潰す方法
・ミル(フードプロセッサー)を使用する方法
・乳鉢を使用する方法
袋に入れて叩く粉骨
丈夫なポリ袋に遺骨を入れ、麺棒などで叩く方法です。
尖った部位もあるため、かならず袋を2重3重にして行ってください。
この粉骨の方法は直接遺骨に触れることがないため、自宅にあるものでできるのが利点です。
半面、そこまで細かくならないことと、遺骨をガンガン叩くことに抵抗を覚える場合があります。
また、火葬が弱いと骨が硬く、粉骨できないこともあります。
わたしはおすすめしません。
骨壺の中で押しつぶす粉骨
本来の骨壺より一回りか二回り大きな骨壺を用意して、麺棒の先などで押し潰す方法です。
この粉骨の方法は骨壷から遺骨を取り出さないで粉骨できることが利点です。
半面、小さい骨壺ほどその厚みが薄いため、あまり力を入れすぎると骨壺が割れてしまい大変なことになります。
また、力を入れすぎることができないため、上記と同じく遺骨が硬いと粉骨できない場合があります。
ミルを使用して粉骨
フードプロセッサー(ミル)に数回に分けてペットの遺骨を入れ、粉骨する方法です。
遺骨の硬さに関わらず短時間で力を使わず、ほぼ粉体にできることが利点です。
半面、料理に使用しているミルを使うわけにはいかないため、新たにミルを購入する必要があります。
また、ミルは分解して洗うことが出来ますが、その構造(ブレードとネジ部など)と遺骨が細かい粉末になりすぎるため、ペットの遺骨を100%取り出すことが難しく、ごくわずかではありますが最終的にはそのまま処分するか、洗い流さなければなりません。
簡便であるためおすすめできる方法です。
乳鉢を使用して粉骨
乳鉢に数回に分けてペットの遺骨を入れ、乳棒を使用してすり潰しながら粉骨する方法です。
乳鉢は漢方やスパイス、岩石などを砕いて粉末状にするためのものなので、その構造が粉骨に非常に適しています。
セラミックや大理石、御影石などの硬い自然素材でできていることが多いため、力を入れやすく、割れてしまう心配もありません。
乳鉢と乳棒以外に部品もないため、遺骨を余すことなく取り出すことが出来ます。
半面、大きな乳鉢というのは少なくあっても高額です。
何度もすり潰さなければならないため時間と手間がかかります。
また、乳鉢をもう一度使う機会もおそらく無いため、ミルと同様出費になってしまいます。
※すり鉢とすりこぎで粉骨しないでください。すり鉢の目に遺骨が入ってしまい取り出せなくなります。
ペットの粉骨で気を付けること
火葬のあと、あまり時間をおかずに粉骨する場合はいいのですが、自宅で供養されていたりどこかに保管してあった場合は注意が必要です。
湿気
火葬したてのペットの遺骨は、高温で火葬されるため水分や有機物が蒸発してカラカラに乾いた状態です。
この状態であれば自分でペットの粉骨を容易に行うことが出来ますが、カラカラということは反対に湿気を吸いやすい状態でもあります。
保管している時期や環境によってはペットの遺骨が湿気を吸ってしまい、うまく粉骨が出来ないことがあります。
たまに骨壺を開けるような方は、ほこりやほこりに混ざった微生物、ダニや蚤のフンなどが知らぬ間に混入し、湿気と混ざってカビが生えてしまうこともあります。
カビ
湿気とわずかな栄養、人が生活している温度があればカビは発生します。
カビが生えてしまったからといって、ただちに遺骨に何か影響が出るわけではありませんが、一度生えてしまったペットの遺骨のカビやカビの色を完全に落とすことは難しいです。
ただ、その程度によっては解決できる場合もあります。
湿気てしまったら
湿気てしまっているだけなら自分で対処ができます。
新聞紙などに遺骨を出し広げ、風通しの良い場所や、除湿などのエアコン機能を使って2、3日乾燥させれば大丈夫です。
風通しが良すぎると、遺灰が飛ばされてしまう恐れがあるので、十分注意してください。
カビてしまったら
カビてしまっている場合で、表面に粉のようなカビが付いている場合は、刷毛や筆を使用して丁寧に取り除きましょう。
黒カビのようにペットの遺骨にべっとりカビが生えてしまっている場合、その色を完全に取ることは難しいですが、カビを死滅させることはできます。
また、どちらの場合もカビが復活しないようにする必要があります。
方法のひとつはガスバーナーです。
一度火葬された遺骨を再度火であぶるのは気が進みませんが、あぶることでカビ菌も全滅し、同時に乾燥させることが出来ます。
この方法をとる場合は、カーボンを布状にしたカーボンクロスなどにお骨を広げ、安全に注意して行うようにしてください。
もう一つの方法は赤外線ヒーターやストーブによる加熱です。
赤外線ヒーターなど身近にもありますが、カビの種類によっては乾燥状態120℃で1時間以上加熱しても死滅しない場合もあるため、各家庭で行うのは難しいかもしれません。
赤外線の方が遺骨を火であぶることもなく、やさしい乾燥とカビの処理ができるのですが、専門的になるため業者さんにお願いする方が良いでしょう。
カビを気にしないのであれば、赤外線ヒーターの前に耐熱性の容器に入れて数時間置いておくことで乾燥はできます。
最適な保管
湿気はまだしも、カビてしまうと大変です。
粉骨までに時間がかかる場合は、ひんぱんに骨壺のフタは開けず乾燥した場所で保管してください。
湿気の多い梅雨や夏にカビることが多いのは確かですが、最近の家庭は除湿や冷房で湿度と温度のコントロールをしているため、人がいる空間ならそこまで気にする必要はありません。
一方、冬季の人がいる空間は暖房と加湿器を使用することで、実はカビにとっては快適な環境です。
ペットの遺骨を保管する場合は、夏だからということではなく、冬の期間も気を付けなければならないのです。
もし、保管しておくことが心配だったり難しい場合は、遺骨を預かってくれるサービスがあるので利用を検討してみてください。
ペットの遺骨を自分で粉骨したあとは
いずれかの方法を用いてペットの遺骨を自分で粉骨した後は、なるべく早く散骨した方がいいでしょう。
理由はやはり湿気とカビです。
粉骨後の自宅保管は難しい
火葬したままの遺骨の状態と異なり、粉末状になった遺骨の表面積は粉骨前とは比較にならないほど湿気の影響を大きく受けます。
粉骨業者さん(の一部)であれば、粉骨後に殺菌や真空処理をしてくれるので大丈夫なことが多いですが、ペットの遺骨を自分で粉骨し、自宅で保管する場合はそれができません。
再度乾燥させようにも、粉骨されたペットの遺骨はバーナーの風圧でも飛んでしまうので難しいのです。
ペットの遺骨を自分で粉骨した場合は、なるべく早く散骨するようにしましょう。
ペットを自分で粉骨すること
人の場合もそうですが、それまであった肉体がなくなりわずかな遺骨だけになってしまうと、寂しさが押し寄せます。
人により考え方や感じ方は異なりますが、遺骨を自分で粉骨して散骨することは、その子の面倒を最後の最後まで見てあげられるということだと思っています。
お庭でも海でも山でもペットが大好きだった場所や、飼い主であるみなさんがいつか眠る場所などに(ルールの範囲で)自分で粉骨した遺骨を撒いて差し上げてほしいと思います。
ぜひ参考にしてみてください。