理論的に考えるお布施の相場|お坊さんに「お気持ちで結構です」と言われたら読む記事

葬送

モノの値段

物の値段は「原価+利益+人件費などの販売管理費」で決まります。
会社とは営利法人なわけですから、誤解を恐れずに言えば利益を上げるために営業しているわけです。
お布施を渡す相手である僧侶の多くは、ある程度税制優遇(お布施は非課税です)のある宗教法人がほとんどですが、これは職人に似ています。
信楽焼・九谷焼など焼き物の職人であれば、役割の異なる職人が複数人で製造することが多いので若干異なりますが、年間に製造できる物の数には限度があります。
その限りある製造数で生活するわけですから、自分や家族に必要な生活費(もしくはほしい金額)から逆算してモノの値段を決めることが必要になります。

たとえば1枚45万円近くする鏡を作る職人さんがいるのですが、この値段には理由があります。
それは1枚作成するのに、手作業で1か月を要するということです。
1か月に1枚作り、1枚売れるとして月商は45万円、単純に計算すれば年商は540万円です。

540万円として

地域や宗派、お寺の規模によって全く異なると思いますが、あるデータによれば地方の小さなお寺で年間200万円~300万円ほどの収入、都市部のお寺では1000万円を超える収入があるということですので、鏡職人さんんと同じ540万円と設定して考えてみます。

雇われ住職とご自身でお寺を持っている住職では手取り収入がまったく異なりますが、ここでは考えません。

単純に540万円をすべて葬儀での収入と考えてみます。
葬儀は通夜から初七日+普通戒名で30万円程度が相場と言われていますので、年間18回、月に1.5回葬儀があればこれだけ稼げることになります。

非課税の売上として一度宗教法人たるお寺に売上を上げてから、給料として受け取ることになるので、実際は寺の管理費用などを考える必要がありますが、どちらにしても葬儀の売上の大きさが分かります。

お布施は最低○○円~お願いします。

お坊さんにとって、説法であったり法話であったり、ありがたいお経やお話を聞かせるのが私たちの御布施(財施)にあたる法施です。
法施に費用がかかるという考え方ではなく、お布施に対して法施で応えるという考え方のため、お布施の金額はお気持ちでとなるわけですが、そんな時代は残念ながら終わっています。

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実際に一部のお寺では、お布施は最低○○円~と記載したり、きっちり○○円です!と記載されたりするようになっています。

お布施を理屈で考える

では、お布施を理屈で考えてみます。
みなさんが悩むのは、通夜や告別式などでのお布施かと思います。
お布施は費用ではなく施しなので、読経料と戒名(法名)料の二つを合計したものになります。
「読経と戒名(法名)はお金をもらってすることではないよ。」ということになりますので、本来は読経「料」などと言ってはいけません。

御車料や御膳料は費用ですので、「料」や「代」と使って平気です。

まず基準について考えますが、これらは理屈(屁理屈)であって、伝統や慣習を重んじる方は気になさらずに読経の相場と言われる金額をお包み下さい。

年忌などの法要時間は60分

宗派や法要の種類によって読まれるお経は異なりますし、葬儀であれば参列する人数によっても異なりますが、四十九日や1周忌で読まれるお経の時間は15分~20分が平均です。
今回は15分で計算します。

会社員でも、客先に出向く時間は就業時間内だと思いますので、お寺(または僧侶宅)から自宅や斎場までの移動時間も時給に加算します。
おおむね20キロ圏内が出張可能距離ですので、片道20キロを車で移動する時間の40分を最大とします。

きちんとしたお坊さんの場合、読経のあとにお話をしてくれると思いますが、この話も貴重なものとされていますので、5分を加算します。

まとめると、1回の法要に要する時間は最大60分ということになります。
●読経の基本は15分
●移動時間は最大40分
●説法・法話5分

通夜~初七日までの総時間は200分

昨今は告別式と合わせて初七日の法要まで済まされることが一般的になっていますで、それをもとに計算します。
●通夜
通夜において僧侶が読経する時間は平均60分です。
通夜振る舞いに参加してくださる(したがる)僧侶もいますが、その時間はカウントには含めません。

●告別式
火葬の予約時間によって若干の変動はありますが、告別式での平均読経時間は30分です。
火葬場が斎場を併設している場合は移動時間がありませんが、移動時間として15分を加算します。
出棺については特に加算しません。

●初七日
初七日法要を火葬前に行う場合と、火葬後に行う場合があります。
火葬前の場合は5分、火葬後の場合は15分ほどの時間をかけて読経頂きますが、ここでは中央値の10分とします。

●火葬読経・炉前読経
火葬炉の前でお経をあげていただく時間は約5分です。
初七日を火葬後に行う場合は待機時間が60分から90分あり、その間にもお話をしてくれることが多いですが、軽食をたべたりしている時間がありますので、加算時間は60分とします。

●精進落とし(お斎)
法要後の食事に僧侶が同席してくれることがありますが、食事代(しない場合は御膳料)を出しますので時間には加算しません。

●移動時間
年忌法要と同じく、40分とします。
通夜、告別式と2回お越しいただくので計80分を加算します。

まとめると総時間は200分(待機時間がある場合は260分)となります。
●通夜60分
●告別式30分
●移動15分
●初七日10分
●火葬5分
●待機時間60分
●移動時間80分

時給換算

冒頭の年収540万円(額面)だった場合の時給を算出すると、時給は2,857円となります。
※年間休日120日(有休考慮せず)、8時間労働の会社員とした場合

僧侶のありがたみやフルタイムではない職業の特殊性を考慮して、約2倍の5,700円(6,000円)を時給として計算を行います。

理屈で算出したお布施の金額

平均的な僧侶の年収額、法要に要する時間などを使って計算してみました。
「お気持ちで結構です」と言われて、この金額以下だとさすがに少なすぎると考える相場として参考にしてもらえればと思います。
なお、小さなお子さんがいるときなどは、あえてお経を省略してくださるなどの気遣いがある場合があります。

年忌法要

四十九日や一周忌法要のとき、近親者を呼んで焼香をすることもあると思います。
香炉の準備などを勘案するため、焼香する人数×5分を加算して計算しています。

焼香なし 5人~10人 11人~20人
四十九日 6,000円 8,000円~11,000円 11,000円~15,000円
一周忌 6,000円 8,000円~11,000円 11,000円~15,000円
三回忌以降 6,000円

葬儀

葬儀の場合、弔問に訪れる時間が少し遅れるとお坊さんが帰ってしまっていることがありますので、焼香の人数は勘案していません。
僧侶が2名以上になるような大規模な葬儀は想定していません。

時間 金額 合計
通夜 60分 6,000円 20,000円
告別式 30分 3,000円
移動 15分 1,500円
初七日 10分 600円
火葬 5分 300円
移動時間 80分 7,200円
予備 15分 1,500円
待機時間 60分 6,000円 26,000円

戒名

お布施には戒名料を含めてお渡しします。
戒名が必要な場合は上の表の金額にプラスする必要があります。

戒名は100万円を超える高額なお布施で授かるものなど、まさに天井知らずではありますが、「信士・信女」という普通戒名なら2、3万円で付けていただくこともできます。

お坊さんには結局なにを渡せばいい?お布施?読経料?戒名料??
お布施定価表示事件2010年5月、巨大グループイオン(AEON)が、お坊さん紹介サービスとして僧侶を紹介する際に布施の価格目安を表示しました。伝統仏教のほとんどの宗派が結集する仏教界最大の団体である全日本仏教会は「お布施に定価はない」「企業...

戒名を付けないといけない気がするかもしれませんが、信仰心が無ければ全く不要です。
戒名が無くても「山田○○之霊位」などと書かれた位牌を用意してくれますので、祭壇の見た目がおかしいということもありません。

戒名に格があるように(院号など)、お寺にも寺格といわれる格があります。
本山であるとか総本山であるとかが分かりやすいと思います。

今回の理屈で算出したお布施の相場は、540万円という金額から導き出していますので、少々格があるお寺の場合は年収1000万円と置き換えて(倍にするだけですので、葬儀なら40,000円ですね)考えてみると良いかもしれません。

お弟子さんが来ることになるので、ありがたいかどうかは感じ方次第ですし、格があるお寺ならここで算出した金額では受けてもらえないかもしれませんね。

お気持ちで結構なはずなのですが笑

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