お坊さんには結局なにを渡せばいい?お布施?読経料?戒名料??

葬送

お布施定価表示事件

2010年5月、巨大グループイオン(AEON)が、お坊さん紹介サービスとして僧侶を紹介する際に布施の価格目安を表示しました。
伝統仏教のほとんどの宗派が結集する仏教界最大の団体である全日本仏教会は「お布施に定価はない」「企業による宗教行為への介入だ」と反発し、料金表示の削除を求めたものです。

価格目安を表示した4か月後、イオンは価格を削除しました。
そのときに表示していた金額は、記事の最後に記載してありますが、そもそもお布施とは何なのでしょうか。

御布施とは

ブータンの僧

御布施(布施)とは、漢字のとおり施すことを指します。
着の身着のままというわけではありませんが、よく見る日本のお坊さんと異なり信仰心の厚いアジア諸国の仏門に入った僧侶の服装(袈裟)はまさに布一枚です。
この袈裟は、何物にも執着しない僧侶の無執着の体現で、ボロボロの布の切れ端をつなぎ合わせ草木で橙色に染めたものです。
いまでは新品の布が使用されるようですが、この袈裟の材料となる布を市民から施してもらったものがお布施の言われとされています。

お布施を与えてもらった僧は、法施(ほうせ)といって、相手の為になる法話などを説き与えます。

近年、私たちがお坊さんに金銭を渡すことは財施(ざいせ)といい、本来の意味はお礼ではなく、慎ましい修行生活を送る僧侶に金銭を施すことを指します。
お布施に金額の目安がないというのは、そういった理由のためなのですが、檀家制度が完全崩壊した現代では、縁もゆかりもないお坊さんへのお礼という方が正しいのかもしれません。

御布施の他に読経料・御車代・戒名料・御膳料も?!

お布施とは施しであり、相手に与えるものです。
その見返りとして(見返りという概念はありませんが)、お経をあげていただいたり、戒名を授かったりします。
厳密にいえば、戒名もお金を支払って授かるものではなく、仏門に入った証として生前に与えられるものです。

現代風の概念でそれぞれの費用を簡単に言えばこうなります。
・お布施…お礼の総称
・読経料…葬儀、法要でお経をあげていただく費用
・御車料…葬儀場、自宅や墓地などへの交通費
・戒名料…戒名を授かるための費用
・御膳料…僧侶がお斎(おとき)に同席しない場合の費用

最近はお布施の中に読経料と戒名料を合わせた金額を包むことが多くなっています。
なぜなら、戒名とお経はお金で買うものではないためです。
そのため○○料と言わずお布施と称します。日本人はこういうピンポイントに細かい部分だけ律儀ですよね。
仮に読経料10万円、戒名料20万円ならお布施は30万円ということになります。

そしてそれとは別に御車料、必要によって御膳料を用意します。

●御車料
実費ではなく多めにお渡しするのが通例ですが、実費が悪いわけではありませんので、往復の距離などから算出した金額が仮に1,600円だとしたら2,000円などキリのよい金額にして用意すると良いでしょう。
ただ、僧侶を送り迎えした場合は不要です。

●御膳料
告別式など法事のあとにお斎(精進落とし)をすることが多いですが、その会食の場に僧侶が同席しない場合にお渡しすることがあります。
会食を共にした場合にはお渡ししませんし、会食を共にしなくてもお渡ししない方もいます。

それぞれの相場を見ていきます。

金額の相場

相場について書いてあるサイトはたくさんありますが、その記事を書いている人の信心深さが色濃く表れていることがあり、金額がまちまちです。
だからこそイオン(AEON)の価格目安がわたしたち一般庶民にはありがたかったわけですが、残念ながらイオンに書いてあったから!と今は言えません。

詳しすぎる金額の相場は別記事を参考にしていただくとして、大まかな金額の目安とイオンの表示していた目安は以下のとおりです。

リンク理論的に算出したお布施の相場

それぞれの金額目安

通夜~初七日 直葬(火葬のみ)
お経料 20万円~40万円 10万円~15万円
戒名料 数万円~百万円以上
御車料 1万円~3万円 3千円~1万円
御膳料 5千円~2万円 0円~1万円

 

イオン(AEON)が表示していた価格は以下のとおり(2010年時点)
※一式とは「通夜」「葬儀」「火葬」「初七日」での読経です。
※直葬とは火葬のみです。

読経 戒名(法名) 目安金額
一式 信士・信女など 25万円
居士・大姉など 40万円
院号・院殿号など 55万円
火葬のみ 信士・信女など 10万円

葬儀で渡すものと渡すタイミング

●入れ物
お布施などは奉書紙(ほうしょし)に入れてお渡しします。
※なければ白い封筒で大丈夫です。
お布施は不祝儀ではないので、こっちが上こっちが下という弔事の折り方をする必要はありませんが、重なるという意味を避けるため中袋には入れないのが一般的です。
中に入れる紙幣は、ボロボロでなければ新札でもそうでなくても問題ありません。

●タイミング
お布施など(お経料・戒名料)を渡すタイミングは葬儀の前がいいでしょう。
この時でなければならないという決まりはありませんが、最初のご挨拶と合わせてお渡しした方がスマートです。

●方法
お渡しする方法は袱紗(ふくさ)に包むかお盆に乗せてお渡しします。
座礼であればお盆、立礼であれば袱紗の方が便利ですが、どちらでも構いません。
葬儀場などの場合、お盆は会場で借りることもできますので担当の方に聞いてみてください。

●渡すもの
お渡しするものは「お布施(お経料・戒名料)」「御車料」場合によって「御膳料」です。
ひとつの袋にまとめて渡すことはせず、ひとつずつに表書きをしてお渡しします。
「御車料」はご来訪いただくごとにお渡ししますので、3日に分けて葬儀を行う場合は3回分の用意が必要です。

やはり安くはない葬儀

一般財団法人日本消費者協会の調べによると、2017年全国の葬儀費用一式平均金額は195万7千円でした。(調査方法に問題があるように感じますが。)
これは「通夜振る舞いなどの飲食費」、「お布施」、「葬儀場の費用」の3つが合計された費用で、内訳はそれぞれ「約30万円」「約47万円」「約121万円」です。

飲食費と葬儀費用は会場の大きさや参列する方の人数によって異なると思いますが、その中でもやはりお布施が高いなぁと感じてしまうのはわたしだけでしょうか…。

お布施といえば「お気持ちで結構です」という返し言葉が有名ですが、わたしのように高いなぁと感じてしまう方は、お坊さんにお願いしない葬儀もアリなのではないでしょうか。

もしくは違う意味で盛り上げてくれるお坊さんにお願いするのも。。

理論的に考えるお布施の相場|お坊さんに「お気持ちで結構です」と言われたら読む記事
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