香典のはじまり
招待状が届いて出席する結婚式と異なり、たいていのお葬式は準備をするわけでもなく唐突に執り行わなければなりません。
いまでもご近所や地区単位のつながりが大きい地域では、ご近所の方々がいろいろと手伝いをしてくれることがあると思いますし、セレモニーホールや斎場が無い地区では、自治会館を葬儀会場ととして使用することもあります。
ご近所や自治会の方々へのお礼として喪家は料理や酒をふるまい、感謝の意を示していました。
(死がけがらわしいと考えられていた時代に、当分の間、近所の人に会わなくても済むように食料を渡していたという説もあります。)
配偶者や親などを亡くしただけでも大変な時に、料理や酒をふるまうのはもっと大変だろうということで、料理や酒は周囲の人が持ち寄るようになりました。
それが形を変え、戦後、日本のほとんどの地域で金銭を持ち寄るようになったのです。
※もちろん今でも喪家側がもてなし、香典は受け取らないというところもあります。
香典の相場・金額
お互いの助け合いという精神から生まれたのが香典なので、実は相場というものはありません。
生前の故人にとてもお世話になったなど、特別な事情があれば高額な香典を渡しすれば良いですし、ご近所付き合い程度であれば3,000円が多いようです。
金銭的に余裕がない場合、通夜や葬儀には参列せず、後日(四十九日までに)香典を持って直接故人宅にお邪魔しても構いませんが、無理をして高額な香典を渡す必要はないので、なるべくなら通夜か告別式に参列するようにしましょう。
決まった相場はありませんが、大まかな目安が下表です。
結婚式同様、今では2万円という金額もほとんど許容されています。
自分との関係性 | 金額・相場 |
父親・母親 | 0円~10万円 |
叔父・叔母・祖父母・従兄弟(姉妹)・恩人 | 1万円~3万円 |
親戚・友人・部下 | 5千円~2万円 |
上司・同僚・知人 | 3千円~1万円 |
友人の両親・ご近所・知り合い | 3千円~5千円 |
香典で気を付けること
少なくとも3,000円は包む
香典の目安は上表のとおりですが、3千円~としてるのには理由があります。
理由は、通夜(告別式)の場で香典返しを渡すのが一般的になってきているためです。
ほとんどの香典返しは1,500円~3,000円です。
高額な香典を頂いた場合は個別にお返しをすることになりますが、参列者の多くが5千円の香典を持参することを想定して準備をしています。
これと合わせて食べ物や酒をふるまうため、3千円以下の香典ではかえって負担をかけてしまうことになりかねません。
3,000円以下ではダメというわけではありませんが、その場合は通夜振る舞いでの過剰な飲食は慎んだほうがいいかもしれません。
ただし、町内会などで1世帯1,000円、香典返しの受け取りも辞退すると決めている場合もありますので、個別に香典を渡さない場合はそれでいいでしょう。
※自治体によりますが、普通は支払いを拒否することができます。
札は新札を使わない
新札を使わない理由は葬儀の準備をしていたように感じさせてしまうためです。
しかし平成の世、これはすでに慣習と言っていいでしょう。
一昔前であれば、新札といえば預金を引き出す際に銀行の窓口で「新札でお願いします」と言っていたものですが、今ではコンビニにも病院にもATMがあり、タイミングによって新札が出てきます。
新札を香典に使用することは今では問題ないとされていますが、気になる場合は念のため一度折ってから包むようにしましょう。
反対に、使い古したようなボロボロのお札も礼に欠くと言われますので、やはり新札を一度折るという方法が無難と言えそうです。
日本はキャッシュレス化が諸外国に比べて進んでいないと言われますが、このあたりに理由がありそうですね。
香典を電子マネーで「ピッ」とするのは想像できませんから。
※お賽銭を電子マネーで支払えるお寺がありました!びっくりです。
東京都港区の神社で、正月の特定日のみEdyが賽銭代わりになるようです。
極端に高額な金銭は控える
結婚式のご祝儀も、香典も巡りめぐるものです。
結婚のご祝儀で頂いた分は、結婚のご祝儀で還すわけではなく、新築祝い、快気祝い、定年祝い、はたまた香典など形を変えて還ってきます。
高額すぎる香典は、いつか還さなければならない相手にとって負担となってしまうこともあるのです。
香典を辞退
宗派や喪家の考え方によっては、香典を受け取らないという場合もあります。
その場合は、無理に渡すことは控えましょう。
香典を辞退するのは、食べ物や酒をふるまう習慣がない地方に多く見られますが、それ以外にも故人の遺志で受け取りを拒否していることもあります。
どちらにしろ、遺族や故人の遺志を尊重するのが一番の供養です。
どうしても何かしたい場合は、お花やお菓子を送って差し上げてもいいですが、その場合でも一言遺族に確認を取るようにしてください。
金額の漢字
香典袋には旧漢字を用いることが一般的ですが、いたずらに難しい漢字を使う必要はなく、自分の年齢や役職などにも合った漢字が良いでしょう。
表にまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください。
3千円 | 金三千円也・金参千円也・金参千圓也 |
5千円 | 金五千円也・金伍千円也・金伍千圓也 |
1万円 | 金一万円也・金壱萬円也・金壱萬圓也 |
2万円 | 金二万円也・金弐萬円也・金弐萬圓也 |
3万円 | 金三万円也・金参萬円也・金参萬圓也 |
5万円 | 金五万円也・金伍万円也・金伍萬圓也 |
10万円 | 金十万円也・金拾萬円也・金拾萬圓也・金壱拾萬圓也 |
香典袋の表書きについてはこちらの記事もぜひ参考にしてみてください。