増えるペット火葬業者
近年のペットは大切な家族の一員として迎えられることが一般化してきて、亡くなった際には人間と同じように火葬して埋葬してあげたいというニーズがとても多くなっています。
その証拠にペット用の霊園や火葬場、自宅まで火葬しに来てくれる移動火葬車の数は年を追うごとに増加傾向にあります。
環境省がまとめたものによると、悪徳な業者か善良な業者かは分からないものの、ペットの火葬業者・ペットの霊園数は全国にそれぞれ約600業者あると報告されています。
ペットの火葬業者には移動火葬車のみで営業をしているところがあり、その中の一部のペット火葬業者の移動火葬車は、火葬設備の能力がきちんと備わっていないものもあります。
具体的には火葬の温度が低すぎたり、排煙に遺灰が混ざってしまったり、過剰な煙で近隣住民宅に被害が及んでしまったりというものです。
そもそも1000℃近い温度を車で使用するのに、消防法でも規制されていないのが現状です。
神奈川県横浜市では、遠心装置(遠心力で遺灰を排煙に混入させない)の取り付けや、ペットを火葬する際の燃焼温度と時間のルール、火葬実績の3年間の保管や大気汚染対策などを条例で定めています。
火葬業者の登録
ペットの火葬を行うことが出来る火葬場(施設)は、人の火葬を行う施設と異なり法令で規制がされていません。
※自治体ごとに条例で許可をしていることが多いです。
同じくペットの火葬移動車についても法規制がなかったため、軽自動車や小型貨物自動車に火葬設備を付けて、ペットを自宅で火葬できる移動火葬車として人気が出ました。
現在もフランチャイズとして移動火葬車のビジネスに参入する個人事業主などが多くいます。
※多くのニーズがあるので、移動火葬を否定するものではありません。
ただ排煙や路上駐車、子供がいる公園付近での火葬、温度不足による不完全な火葬、さらには法外な料金の請求など多くの問題が起こり、自治体独自の条例が制定し始めました。
条例の多くは業者の登録制度や火葬場所の指定ですが、残念ながら登録をしないで営業を行っているペット火葬業者がまだまだいます。
そして、本当に登録しているかどうか、わたしたちには分からないのです。
ペットの火葬は義務ではない
ペットの火葬は義務ではありません。
義務ではありませんが、わたしのペットも火葬を行いました。
ネットで安いところを探せばいくつか出てきましたし、市の清掃局や環境課にお願いすれば火葬して合葬してくれることも分かりましたが、私の場合は散骨したかったのと安心してお願いできる火葬施設、そして1体1体火葬してほしかったので公営にしました。
ペットの火葬は義務ではありませんが、自宅に庭がなかったり、そのまま埋めることに抵抗があったり、きちんとお墓に入れてあげたかったりなど多くの理由で火葬が選ばれます。
飼うときに調べることも大切です
ペットショップや保健所、愛護団体からペットを買ったり譲り受けたりします。
子犬にしても、子猫にしても、リスやハムスター、爬虫類でもまだまだ小さくて愛らしいですが、残念ながら大体のペットが私たちより先に亡くなります。
亡くなってから、悲しみに更けながら火葬場や霊園を探すにはどうしても時間が足りません。
犬であれば、死亡届の提出も必要です。
家の近くにペットも火葬できる火葬場があるか事前に調べておくようにしましょう。
全国の公営火葬場はこちらから確認することが出来ます。
火葬事情
そのまま土に埋めてあげても良いにも関わらずペットの火葬の割合は年々増え、その中でも1体1体を個別に火葬してもらうことを希望し、遺骨を自分で引き取って何らかの形(お墓への埋蔵や散骨)で供養することを希望する人の割合は7割を超えています。
人の火葬(とその後の供養)の割合、おおよそ99%からみるとまだまだ低い数字かもしれませんが、地方でペットを埋める土地が余っている場合を除けば、都市部の飼い主のほとんどは火葬しているものと考えられます。
それだけペットの火葬は一般的になっているようです。
だからこそトラブルが起きる前に、登録の有無や火葬設備を事前に調べておくことが大切です。
※近隣住民の怒りの矛先が業者さんではなく、火葬をしに来る飼い主さんにも向かってしまいます。
火葬の費用
ペットの大きさや体重によって異なります。
また、合同火葬か個別火葬かでも料金は異なりますが、個別に対応してくれるなら公営の火葬場がもっとも経済的です。
引取り | 1キロ未満 | 5キロ未満 | 25キロ未満 | 50キロ未満 | |
公営(個別) | 可 | 10,000円 | 20,000円 | 25,000円 | 30,000円 |
公営(合同) | 不可 | 1,000円~10,000円 | 不可 | ||
自治体(ゴミ) | 不可 | 500円~3,000円 | 不可 | ||
民間(個別) | 可 | 20,000円 | 30,000円 | 40,000円 | 50,000円 |
※金額は目安で、自治体や業者によって異なります。
※市内(町内)在住でなくても受け入れ可能な公営火葬場が多数あります。
火葬したあと
火葬した後は納骨堂やペット霊園、自宅の庭に埋蔵したり、散骨したりします。
ペット霊園は合同墓地と個別墓地に、散骨は海や山または自宅の庭などにすることになりますが、ペット霊園やペット納骨堂は注意が必要です。
なぜなら、倒産や廃業の事例が多いためと、結局誰もお参りに行かなくなる恐れがあるからです。
廃業の危機
上場しているような大きな会社が倒産する時代ですから、どこにでもそのリスクはあるのですが、乱立して数が増えすぎた納骨堂やペット霊園はかならず淘汰されます。
その時にその霊園の引受先があるとは限りません。
※数万区画を有する神奈川県内の霊園も破産しました。
そうなったらせっかく永代供養として遺骨を預けても、ペット霊園として機能していないために供養どころか荒れ果ててしまうでしょう。
その時に飼い主さんが健在なら移転すればいいのかもしれませんが、一度埋葬した遺骨を掘り起こすのは心情的にも大変です。
また、合同墓であれば遺骨をそのまま埋葬することになるので、回収は不可能です。
無縁になる
人のお墓がどんどん無縁墓になっています。
飼い主さんご自身が亡くなった後、子供や孫にペットのお墓まで面倒を見てもらえるでしょうか。
やはり実際はなかなか難しいと思います。
そうなれば、個別墓地の場合は無縁墓になってしまします。
自治体の墓地でも
自治体に火葬や供養をお願いした場合でも、ペットの遺骨が自治体の運営する墓地霊園に入れるわけではありません。
その多くは供養を委託した墓地霊園またはお寺などに合葬されることになります。
公営の墓地霊園の多くはペットのお墓を認めていないところがほとんどだからです。
委託先が歴史ある墓地や寺院なら少しは安心できる部分もありますが、自治体によって異なる部分ですので、しっかりお調べいただくことをおすすめします。
選ぶなら納骨堂か散骨
ペットの火葬を終えたあとは、納骨堂(合祀)か散骨がおすすめです。
なぜなら、自分の代で供養が終わるからです。
●納骨堂(合祀)
人の納骨堂の多くはお寺(宗教法人)が経営しています。
ハイテクな納骨堂から風情のある納骨堂まで種類は様々ですが、ほとんどの納骨堂は準永代供養方式をとっています。
だいたい25回忌くらいまでは遺骨を個別に管理して、遺族が会いに行けばいつでも会うことが出来、そのあとは合同墓に移されて供養されるという流れです。
ペットの納骨堂は民間業者が経営していることがほとんどで、数か月から1年間骨壺のまま納骨堂に預け、そのあとはやはり合同墓に移されて他のペットたちと一緒に供養されるというものです。
この利点は何と言っても(廃業しなければ)無縁になる心配が無い点と、飼い主さんの元気なうちはいつでも会えるという点です。
納骨堂によっては骨壺のまま数年間安置できるところもありますので、ぜひ検討してみてください。
●散骨
自宅の庭でも植木鉢でも、海にも山にも散骨ができます。
供養を場所やモノではなく、心でするのであれば散骨はおすすめの手段だと言えます。
理由はやはりいつでも会えること、そして生命として自然に還すことが出来るからです。
わたしもペットを散骨しましたが、身近に感じることが出来ているので満足しています。
自宅に散骨することが出来れば、そこに花や木を植えて新しい命としてまた会えるなんて素敵ですよね。
大切なペットになら何でもしてあげられると思いますが、散骨にはお金がかからないというメリットもあるので、ぜひこちらも検討してみてください。
ペットを火葬しないという選択
ペットの火葬は義務ではありません。
納骨堂に納めたり散骨したりしない場合であれば、無理に高温で燃やさずにそのまま埋めてあげることも検討してあげてください。
もちろん住環境が許せばということになりますが、ペットの火葬が一般的になってきたのは本当に最近、ここ30年くらいの話です。
ペットの絶対数や集合住宅の増加など環境は異なりますが、それまではそのまま土に返してあげることがほとんどでした。
なぜなら火葬といってもゴミとして燃やされてしまっていたからです。
(いまでも一般ごみとして燃やす自治体はあります。)
人が火葬で供養されるの理由の一つにこの国の狭さがあります。
土葬するには場所を取りすぎるのです。
きちんとルールを守って埋めてあげる場所さえあれば、ペットが人の火葬にならって火葬する必要はないので、ペットを火葬しないという選択も考えてみてはいかがでしょうか。