陸地への散骨
散骨というと海洋散骨が一般的です。
理由は、散骨を制限する条例が及びにくいということが一番です。
陸地は、過去の節度を守らない散骨業者による乱散骨により、各自治体が独自に散骨を禁止したり散骨場の建設を許可制にする条例を設けたため、業者が散骨するにはハードルが高くなっています。
ところが個人が散骨をするとなると、海よりも陸地(山)の方が船をチャーターしたりしない分、散骨しやすかったりする場合もあります。
条例ではなく法令
散骨についての規制が働いているのは、現在のところ条例によってのみです。
条例とは国の法律で定めていないことや、法律で定められている範囲以内で補完的に制定される地方自治体による規則(例規)です。
国有地であれば、散骨に関する法律が存在しないため散骨できるというわけです。
散骨に関する法律
法律には散骨に関する直接的な法律がないことは分かりました。
では、本当になんの規制もないのでしょうか。
いいえ、墓地埋葬法があります。
埋めてはいけない
散骨はその名のとおり、骨を散らす(撒く)ことを指します。
よって、穴を掘って埋めたり、土を盛ったりすると国有地であっても違法行為となります。
また、散骨の前には必ず骨だと分からない大きさになるまで粉骨しなければなりませんが、1ミリとか2ミリとかの大きさについては誰かが勝手に言っているだけです。
ここは国有地?
粉骨を済ませましたが、いったいどこが国有地なのでしょうか。
関東近県の人だと、なんとなく富士山に散骨したいと思う人もいるかもしれませんが、富士山頂は私有地のため散骨はできません。
(長く争われた国と浅間神社の所有権裁判は、最高裁判決により1974年、8合目以上は浅間神社の所有と認められました。)
ただし、気象観測装置などが残置された部分は国有地なので、違法とはならないはずですが、これは屁理屈なのでマナーとしてやめましょう。
国有地ではない場所
国有地のような響きながら、似て非なるものが国定公園です。
国定公園は、平均するとはその4分の1以上が私有地や公有地(県や市の所有)であり、すべてが国有地というわけではありません。
(検索上位の散骨NPO法人さんには誤った記述がありますのでご注意ください。)
たとえば樹氷で有名な蔵王国定公園は、約3分の1が私有地や公有地です。
愛知県三河湾の国定公園にいたっては、90%以上が私有地となっています。
したがって、国定公園=国有地と勘違いして散骨するのは危険です。
散骨ができる国有地とは
では、国有地で散骨に適しているような場所はあるのでしょうか。
それは国有林です。
林野庁のウェブサイトから国有林を調べることができます。
ただし、国有林であっても、以下の場合などは散骨をしてはいけません。
・民間に貸し付けている場合
・保護林となっている場合
・天然記念物などが生息する場合
・世界遺産に登録されている場合
慎重な判断を
国有地であっても散骨場ではありません。
ここで紹介しているように、個人がその故人を弔うために散骨をするのであれば問題なしと現在はなっていますが、度を超えた散骨が行われれば国による法律で散骨を規制するようになってしまうかもしれません。
山への散骨を代行する業者もありますが、違法スレスレか完全にアウトだとわたしは思っています。
そのような業者に依頼することを、わたしはおすすめしません。
陸地に散骨したい場合は、個人で行うこと。
これだけは守ってもらいたいと思います。