宗派によって違うお焼香の作法|仏式葬儀9割の日本人が知っておくこと

葬送

焼香の目的

仏教では花と香が多用されます。
仏を供養するときや、霊前を清めるために棒状の線香、渦巻き香、粉末の抹香などを焚きます。
また身体に直接香料を付けてお清め・供養する方法もありますが、葬儀の際に一般的な抹香と線香を用いた焼香についての作法を紹介します。

信仰として仏教が浸透しているアジアの国々の寺院や霊廟に行くと、常に煙が蔓延しているというくらい香を焚いているのですが、これは仏様への供養のための作法です。
同じように仏式がほとんどの日本でも、香を焚くことで葬儀を行っている霊前を清めています。

焼香の作法

焼香は座って行う座礼と、たったまま行う立礼、屋外で行うときなどに香炉を順番に回して焼香を行う回し焼香があります。
座礼と立礼の作法は基本的には同じで、違いは立っているか座っているかというだけです。

実際に焼香を行う手順です。
① 香炉の1歩前で遺族に一礼します。(座礼の場合は座布団の前に座って一礼します)
② 遺影に一礼します。
③ 一歩進んで香炉の前に立ちます。(ここで一度合掌してもしなくても大丈夫です)
④ 数珠を持っている場合は左手に持って焼香します。
⑤ 合掌します。
⑥ 遺族に一礼して香炉の前を離れます。

このとき数珠はあった方が格好がつきますが、本来の意味とは無関係に、喪服を着用することと同じような慣習になっていますので、なければないで問題ありません。
葬儀場によっては当日貸してくれるところもありますから聞いてみても良いでしょう。
※そもそも数珠は貸し借りするようなものではないと言う信仰心の厚い方はいます。

ただ自分が生きていれば何度か使用するものですので、これを機会に購入してもいいかもしれません。

焼香は3回が正解?

焼香の目的が霊前のお清と冥福を祈る行為なので、気持ちがこもっていれば実は回数自体をそこまで気にする必要はありません。
ただ、なんとなく3回やっているという方もいるのではないでしょうか。

この3回行う理由も諸説あり、仏教において克服するべきとされる3つの煩悩、貪・瞋・癡(とん・じん・ち)を表しているとされることもあるようですが、同じ仏教でも日本では宗派によって焼香の回数が異なるため定かではありませんし、場を清め、故人の冥福を祈りつつ煩悩も克服するとはいささか欲張りな気もします。
※貪・瞋・癡:貪とは貪欲な心、瞋とは怒りや妬み、癡とは無知や愚痴を表します。

規模の小さな葬儀の場合、住職さんが焼香の手順を説明してくれることもありますので、その場合はそれに習って焼香すれば良いでしょう。

とはいえ、宗派ごとにルールが決まっていることも確かです。

宗派ごとの焼香

各宗派で定めている焼香の作法をまとめました。
焼香に際して各宗派で共通しているのは浄指(じょうし)と言われる右手の親指・人差し指・中指の3本を使って香を持つというところです。
押しいただく行為は宗派によってことなります。

抹香の場合

宗派 回数 作法
真言宗  3回  1回目は押しいただき、2,3回目はそのまま香炉に置く
天台宗  1~3回  回数に定めはありませんが、香は押しいただきます。
日蓮宗  1回  押しいただきます。3回行うのは僧侶(導師)です。
臨済宗  1回  回数に定めはありませんが、香は押しいただきます。
浄土宗  1~3回  回数に定めはありませんが、左手を添えて押しいただきます。
曹洞宗  2回  1回目は左手を添えて押しいただき、2回目はそのまま置く。
浄土真宗  1回  押しいただきません。
真宗○○派  2回  押しいただかず、合掌時に南無阿弥陀仏と唱えます。

※「押しいただく」とは、手に持った香を眉間のあたりまで持ち上げて祈る行為をいいます。

線香の場合

宗派 本数 作法
真言宗  3本  正三角形に置くのが作法ですが、葬儀では1本で平気です。
天台宗  3本  正三角形に置くのが作法ですが、葬儀では1本で平気です。
日蓮宗  3本  特に作法は定められていません。
臨済宗  1本  特に作法は定められていません。
浄土宗  1~3本  特に作法は定められていません。
曹洞宗  1本  押しいただいて立てます。リンがあれば2~3回鳴らします。
浄土真宗  1本  香炉に納まる長さに折って寝かせて置きます。
真宗○○派  1本  香炉に納まる長さに折って寝かせて置きます。

※線香に着いてしまった火は息で吹き消すことはせず、左手で扇いで消します。
※複数本の線香を立てる場合、火は一度に着けますが立てるのは1本ずつです。

回し焼香の場合

回し焼香では左手に香炉を持ちます。
そのため遺族や遺影に向かって一礼することは省略され、左手を使用する作法も省略されます。

それ以外の作法は各宗派ごとに定められているとおり行い、自分の次の人に香炉を渡す際に軽く会釈をして終わります。

相手の宗派に合わせるべきか

各宗派ごとに焼香の作法が決まっているということは、みなさん自身の宗派と故人の宗派が異なる場合が出てきます。

このような場合は2通りの選択ができますが、どちらを選んでも大丈夫です。
・相手の宗派に合わせた焼香の作法で行う
・みなさん自身の宗派の作法で焼香を行う

考え方はシンプルで、故人や遺族に敬意を払っているかということに尽きます。
これは茶道でも同じで、異なる流派の茶会でも自分の流派の作法でもてなします。

ただ大切なことは、ご自身の宗派の作法がきちんと出来ていて初めて敬意の表れになりますから、焼香の作法にあまり自信が無いときは相手方の作法で焼香した方がよいでしょう。

焼香する姿

みなさんが焼香するとき、作法に自信がないと前の方を観察しますよね。
しかし、ここで書かせてもらったとおり宗派ごとに焼香の作法は異なります。

そこで大切になってくるのが所作、立ち居振舞いです。
ご自分の宗派も故人・ご遺族の宗派も分からないことは良くあります。
そんなときでもあわてる必要はありません。

姿勢をただし心を込めて1度押しいただくように焼香をする姿は、誰から見ても恥ずかしいものではありません。

考えすぎて心ここにあらずになるよりも、ぜひ心を込めて故人の冥福を祈って差し上げましょう。

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