霊柩車は利用しなくちゃいけないの?減ってきた宮型霊柩車と最新の霊柩車その費用は?寝台車との違いも

葬送

遺体を搬送する車両

遺体を搬送する車両として「霊柩車」と「寝台車」があります。
遺体を搬送する手段は、これ以外にも「自家用車」「船舶」「飛行機」を利用することもありますが、今回は主に霊柩車と寝台車について紹介します!

霊柩車と寝台車、実は同じ?

ネット上でよくこのような内容を見かけます。
「寝台車」は遺体の搬送用で「霊柩車」は火葬場に行くとき専用。

では寝台車で火葬場には行けないのか。
答えは葬儀車両のレンタル会社による、です。

多くの場合、葬儀会社は霊柩車などの葬儀車両を持っていません。
葬儀会社は、車両を所有している会社の配車サービスを利用しており、タクシーと同じ仕組みです。
そのため「寝台車(搬送車)」を手配しても、その会社に霊柩車しかなければ、霊柩車が配車されることがあるのです。

寝台車はその名の通り「寝て乗る車」です。
棺を乗せる用ではなくストレッチャーに乗せた遺体を運ぶのが普通でしたが、最近はどちらにも対応した車両が一般的になってきていて、寝台車と霊柩車の垣根はなくなりつつあります。

霊柩車と寝台車

霊柩車といえば、パッと思い浮かぶのは宮型といわれるいわゆる「和」「派手」な霊柩車が思い浮かびます(世代によるかもしれません)が、用途は遺体を納めた棺を乗せて移送するということで、棺以外には親族が1名から2名同乗できるタイプが一般的です。。

対して寝台車はというと、宮型ということはないにせよ、霊柩車と同じかミニバン・マイクロバスが使用され、用途は同じく遺体を乗せて移送するということで、違いは棺が載るかどうかです。

画像:株式会社カワキタ

ミニバンタイプの寝台車であれば、救急車の車内を想像してもらうと分かりやすいと思いますが、遺体以外に親族が3名から4名同乗できます。
マイクロバスタイプなら、遺体以外に15名から20名が同乗できるタイプもあります。

寝台車と霊柩車の垣根がなくなってきたことで、利用者である私たちにも恩恵があります。
後述しますが、それは料金です。

霊柩車と寝台車の使い分け

一昔前は、家族親類が亡くなった後は自宅でお通夜や葬儀・告別式を行いました。
霊柩車が使用されるのは自宅から出棺して火葬場に向かう時、故人を乗せて火葬場に行くために使用されるのが一般的でした。
最近の葬儀はセレモニーホールや斎場で執り行い、そこから直接火葬場に行くことが多くなっていますが、出発地点はどこであれ、棺に納められた遺体を火葬場に移送する際に使用されるのが霊柩車です。

病院で亡くなった時に、一度自宅に遺体を帰らせたり、病院から斎場に移送することがあると思います。
そこで使用されるのが寝台車(搬送車)で、霊柩車が使われることはまずありません。
寝台車(搬送車)で使用される車種は、トヨタエスティマなどの大型のミニバンタイプが普及しています。
理由は、エスティマにはもともと介護用の車両が販売されていることもあり、寝台車に改造しやすいということがあるためです。

なお、車両レンタル会社によっては、寝台車を高齢者の介護サービス用と併用している場合もありますので、介護を使用されている方で気になる方は聞いてみると良いでしょう。

霊柩車は必ず使わなければならない?

病院や自宅から棺に納めていない遺体を運ぶ場合、または斎場から火葬場に棺を運ぶ場合、実はどちらも自家用車で運ぶことが可能です。
ただし、棺に納めていない遺体を自家用車に乗せるのはとても大変です。
また、棺に納めた状態で火葬場に運ぶときもいくつか気を付けるべきことがあります。
・死亡診断書(火葬許可証)を携行する
・車の荷室に棺が入るか事前に確認する
・移動時に棺や遺体が動かないよに固定する
・火葬場が自家用車での受け入れを許可しているか確認する

宮型霊柩車

わたしにとっては霊柩車といえばこれで、「親指を隠しなさい」と親に言われていたことを思いだします。
※親指を隠しなさいという理由は「親の死に目に会えない」「親・親戚に不幸がある」という言い伝え・迷信によるものです。念のため。

宮型霊柩車の特徴は、まずその見た目です。
土台となる車両、主にトヨタクラウンですが、その車両の後席部分を大胆にカットし「宮」と呼ばれる絢爛豪華な装飾が鎮座しています。
どれも同じように見えますが、実は「関東型」「名古屋型」などの種類に分かれていると言われていますが、明確に分かれているわけではなく、定義もいまいちはっきりしていません。

白木の宮が乗せられたものが関東型と言われたり、言われなかったり。

画像:阪神特殊自動車

黒檀の宮が乗せられたものが名古屋型と言われたり言われなかったり。

画像:名古屋特殊自動車

それぞれに共通するのは、破風です。
破風とは屋根直下の装飾で、前後のみ開いた二方と、前後左右が開いた四方があり、その違いは格式というわけでなくデザインです。
屋根の上に竜や鳳凰が乗っているものも基本的にはでデザインということです。

宮型霊柩車の生い立ち

宮型といわれる所以である「宮」、辞書で調べると…
・神社。 「お宮」
・皇族を敬って言う語。 「宮さま」
・皇族、また皇族の御殿。
・天子・神・仙人などが住む所。御殿。
とありまます。

仏式の葬儀が9割という日本で、神の御殿である宮型を名乗る矛盾はここでは触れないことにします。。。

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霊柩車の始まりはアメリカから

1903年、明治36年にアメリカで霊柩車の広告が掲載され、その2年後にはパリモーターショーで霊柩車が展示されていたという、今では想像できなことですが、それだけ画期的だったことが伺えます。

そのころ日本では、輿や大八車に遺体を乗せて運んでいました。火葬がほとんど行われていない時代です。
日本に自動車が初めて輸入されたのが1900年頃で、霊柩車という概念の車が登場したのは大正末期1926年頃とされています。
この頃の霊柩車はフォードなどの外国車を簡易的に装飾しただけのもの。
昭和に入り、宮型の霊柩車が登場します。

なぜ宮型になったのかといえば、大八車に輿(神輿)を乗せた状態をそのまま自動車に置き換えたためです。

戦後、急速な復興・経済成長と相まって、葬儀くらいは豪華にしたいという庶民の気持ちが霊柩車の装飾を豪華にしていきました。

宮型の場合、ベースとなる自動車代とは別に1000万円以上の製作費がかかると言われていますから、火葬が一般化することによる火葬場への移送の増加で葬儀会社が潤ったのも大きな要因です。

そして日本人特有の「みんな霊柩車を使っているから」という右にならえの精神で一気に宮型霊柩車が移送の常識になっていったというわけです。

飽きっぽい変化に富んでいるのも日本人

減少傾向にある宮型霊柩車。新規での製作はもうほとんどなし
朝日新聞によると、2000年代初頭には移送のほとんどは宮型霊柩車だったが、わずか9年後の2009年には洋型霊柩車の利用率が逆転。
さらに9年後の現在ではそのほとんどがシンプルな洋型霊柩車になっています。

急速に変わっていった理由は2つです。
火葬場の規制
シンプルな葬儀の増加

火葬場の規制

実際は火葬場の規制ではなく、近隣住民からの苦情・要望です。
宮型霊柩車は派手である
宮型霊柩車は葬儀を連想しやすい
宮型霊柩車が近所を入るのが嫌だ

火葬場は、その存在だけでも近隣住民から歓迎されていません。
近隣住民からの要望を聞かないわけにはいきませんから、葬儀会社を経由して霊柩車を所有する会社にこう言います。
「○○の火葬場に行く際は洋型霊柩車を使用してください」と。

シンプルな葬儀の増加

巨大な花輪と宮型霊柩車、親族・親戚・友人知人以外にも会社関係者まで参列していた時代が終わり、身内だけでこじんまり葬儀をすることが増えました。
なるべくスマートに済ませたいという思いには豪華な宮型霊柩車はどうしても不似合いです。
携帯電話の変化を見ても明らかだと感じます。

洋型霊柩車

画像:阪神特殊自動車

最近主流の霊柩車が洋型と言われるタイプ。
洋型といってもベースとなる車が外国車というわけではなく、単にシンプルなタイプの霊柩車であれば国産車であっても洋型霊柩車といいます。

洋型と言われる理由は宗教の棲み分けによるもので、仏式なら宮型霊柩車、キリスト教なら洋型霊柩車がもともと使用されていて、キリスト教は洋風?のためこう呼ばれるようになりました。
宮型霊柩車が仏式だというのなら、インド型や中華型だと思いますが、やはり触れません。

実際道を歩いていても「あ、霊柩車だ。」という機会が減ったように感じるので、それだけ普通の車に溶け込んでいることが実生活でも分かります。

宮型霊柩車の内部は天井画や彫刻などが施されていることが多いのですが、洋型霊柩車ではこういった装飾が見られないのも大きな違いです。

人気が亡くなった宮型霊柩車はモンゴルで活躍?!

モンゴルの宗教の多くは仏教です。
仏教の中でもダライ・ラマで良く知られるチベット仏教への信仰が厚い国です。

チベット仏教は日本と同じ大乗仏教(インド直輸入)で、寺院と宮型霊柩車の姿かたちが似通っている部分があったため、盛大な葬儀を行うことを良しとするモンゴル人に大人気!となっているのです。

きっかけは日本で活躍していたモンゴル人力士が帰国した際、現地の僧侶に宮型霊柩車の存在を紹介したこと。その後2003年に日本の葬祭業者がモンゴル寺院を研修で訪れた際に、僧侶から「ぜひ宮殿のような車を譲ってほしい!」と懇願され寄贈することに。

実際に、宮型霊柩車を寄贈した葬祭業者「アラキ」の荒木由光社長は、「宮型霊柩車の派手さと死者を盛大に弔うモンゴルの国民性が合致したのでは」と分析。
モンゴルの街中で宮型霊柩車は「走る寺だ!」と注目を集め大ブームになり、現在は中古車を中心に多くの霊柩車がモンゴル国内に送られ、予約は常にいっぱいの状態とのこと。

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とのこと。
まさに捨てる神あれば拾う神ありですが、一体いくらくらいで売られているのかが気になるところです。

霊柩車の使用料

モンゴルでの販売価格は分かりませんが、みなさんが葬儀で使用する際の費用はというと、地域・会社によってかなり異なります。

洋型霊柩車と宮型霊柩車のどちらも同じ料金設定をしている会社もあれば、意匠の凝った(本体価格の高い)宮型霊柩車を割高に設定している会社もあります。
共通しているのは距離によって料金が高くなるという点で、ほとんどの場合移動距離10キロまでが最小の料金になります。

霊柩車の利用料金の目安は以下の通りです。
宮型霊柩車:45,000円~60,000円
洋型霊柩車:25,000円~40,000円
寝台車・搬送車:12,000円~20,000円
※いずれも記事執筆時点

霊柩車の基本料金は、霊柩車を所有する会社の車庫からの料金が計算されるのが通常ですが、遺体の引受時から料金が発生する良心的な業者もあります。

霊柩車料金の簡易計算はこちら

こだわらないなら断然寝台車

表の通り、車種や見た目にこだわりが無ければ寝台車が断然おすすめです。
なぜここまで安い寝台車があるのかというと、葬儀屋さんが自社で所有している場合が多いためです。

記事中で、霊柩車は高額で複数台を所有する必要があるため、葬儀会社ではなく貸し出し会社から配車してもらうと説明しました。
しかし車の外装はそのまま、内装も基本的にはそのままであれば、ベース車両+200万円程度で製作することが可能です。
そのため外注ではなく自社で所有してしまった方が、急な使用も問題なく対処が可能で、顧客満足の向上に役立ちます。
なにより、償却が済めば搬送自体からも利益を得ることができます。

寝台車の利用は利用者であるわたしたちも葬儀会社にもメリットが多いのです。

霊柩車を作っている会社ってどんな会社?

生きているうちには乗ることが出来ない乗り物、霊柩車。
死んでしまったら何も分からないのですが、どうせ乗るなら霊柩車も選んでみたいと思いませんか?
そんな魅力的?な霊柩車を制作している会社を紹介させてください。

光岡自動車

画像:光岡自動車

宮型霊柩車から洋型霊柩車に需要が移ってから特に霊柩車制作に力を入れているのが、日本最後発の自動車メーカー光岡です。
光岡自動車といえば前衛的なデザインの「オロチ」が圧倒的に有名ですが、霊柩車も作っているんです。

画像:光岡自動車

専門職人を必要とする「宮」部分を作成する必要が無いため、ベースとなる車両から独自のデザインを作ってきた光岡自動車にとってはまさに得意分野と言えるわけです。

そんな光岡自動車が目指すのは霊柩車業界のトップシェア。
現在は長い間業界を独占していた東礼自動車がトップシェアで、シェア30%程度と言われていますが、2016年時点でその差が10%程度まで縮小しているということなので、個人的には光岡自動車に引き続き頑張ってもらいたいと思います。

東礼自動車

画像:東礼自動車

言わずと知れた(?)業界トップの最大手。
その前身の創業は昭和19年にさかのぼり、1社で複数台所有するには高額な霊柩車を複数の会社で共同所有するという形で事業を開始。
皇族や総理大臣の葬儀で使用する霊柩車を製作した実績や、震災などの大規模災害時には社会貢献として霊柩車や寝台車を数多く提供するなど、大手らしい活躍をしています。

良くも悪くも歴史ある会社という雰囲気で、業界の構図と相まって閉鎖的な印象を私は受けました。
ネット上で見ても、なぜかT自動車と書かれていたり。。

カワキタ

画像:株式会社カワキタ

平成26年設立、富山県に本社を置く霊柩車専門メーカーです。
新しい会社ですが、終活関連企業の祭典エンディング産業展にも積極的に出展しています。
元となる自動車販売会社からの分社化で設立しているので車両整備には信頼がおけます。

保守的な車種だけでなく新しい車種の霊柩車の製造も積極的で「宮型霊柩車のように目立ちたくないが、自分らしく送ってもらいたい」というニーズに応えています。

葬儀プランに含まれていることが多い

ここまで紹介してきましたが、霊柩車を個人的に手配するという方はあまりいません。
理由は葬儀のプランに含まれていることが大半で、棺や祭壇、お花、保管料などと「まとめて30万円」という形で提示しています。
霊柩車・寝台車の相場が分かっていれば、プランの内訳金額が分からなくても割高なのか割安なのかの判断が可能です。

自宅で葬儀を行い、火葬場に直接行くときは個人的に霊柩車を手配することになりますので、ぜひ参考にしてみてください。

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