散骨に関する法令|散骨をするなら法律と条令、魚漁法が関わります

散骨

許可の要否

散骨を業者さんに委託して行うのか、それとも自分で行うのかによって若干変わってきますが、散骨できる場所はいくつかの法律・条例によって規制されています。

国に散骨の許可を求めても絶対に承認されません

と書かれた散骨業者(検索上位のNPO法人)さんがありますが、そもそも国に散骨する許可を求めることは不要です。
許可や承認が必要なのは、独自に条例を設けいている都道府県です。

条例によっては許可不要

条例を設けているのは都道府県で、主に散骨業者や散骨場を建設しようとする業者に向けて施行されているものが多くなっています。
そのため、個人が散骨を行おうとする場合、実は法律も条例もないということがしばしばです。

もちろん法律も条例もないから何をしても良いわけではないことは言うまでもありません。
粉骨をせず遺骨のまま散骨したり、誰かの飲料水になる可能性のある河川への散骨、私有地への散骨、土をかける埋葬は違法行為にあたります。

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では、どのような法律・条例に気を付けなければならないのでしょうか。

これが違法行為になる

散骨業者さんに委託する場合、業者さん自らが違法行為を行うことは考えずらいですが、自分で散骨しようとする場合には、以下の法律・条例に気を付ける必要があります。

●墓地埋葬法
●漁業法
●刑法
●条例

墓地埋葬法

この法律の目的(第1条)は、墓地などへの埋葬が公衆衛生や公共の福祉の点で支障なく行われることとされています。
亡くなった人への法律というよりは、火葬業者・墓地霊園・納骨堂の経営を行おうとする者への法律で、みなさんが気を付けるべき点はこの1点です。

第4条 埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。

埋蔵とは火葬が済んだ遺骨を埋める行為のことで、これを墓地・霊園以外でしてはダメという条文です。
この条文によって、山や自宅に散骨するときには土に埋めたり土をかけたりしてはダメですよという解釈になっています。

そもそもの目的にあるように公共の福祉に支障がないことが求められています。
噛み砕くと、みんなの迷惑や不快にさせる行為はやめてくださいね。といったところですので、登山道や公共の場所、遊泳区域などでの散骨はご法度ということになります。

また墓地埋葬法は、土葬や埋蔵をする時は埋葬(火葬)許可書を受理した後でなければしてはならないとしています。
理由の一つは遺体のすり替えや犯罪を防止するためです。

家庭用の焼却炉も売っていますから、極端な話だと火葬場でなくとも人を燃やすことはできてしまいます。
その遺骨を持って来て、埋葬でも散骨でもしてしまえば、その人は二度と見つかることはありません…。

しかし上で記載した業者さんは、「埋葬許可書なんて必要ありません。」と言っています。
散骨という行為は埋葬に近いものだと思いますし、お墓に入れるのとは異なり回収することもできません。

わたしとしては、これはかなりグレーゾーンだと思っていますが、いかがでしょうか。

漁業法

公のものであるはずの海の使用や利用、天然の海産物を採捕することに許可や権利が必要なことの是非は未だにありますが、とにかく漁業法という法律があります。

この中で散骨するみなさんに関わるのは次の2点です。

第二十三条 漁業権は、物権とみなし、土地に関する規定を準用する。

ややこしいのですが、漁業権は漁場に対するものではなく漁業に対する独占権なので、その漁場内で漁業以外の活動をすることは問題ありません。
では、漁業ではないから散骨ができるかというと、次の1点が関わってきます。

第百四十三条 漁業権又は漁業協同組合の組合員の漁業を営む権利を侵害した者は、二十万円以下の罰金に処する。

いわゆる漁業権の侵害です。
なにが漁業権を営む侵害になっているかといえば、それは散骨の行為そのものです。
遺骨を撒いた場所の魚をわざわざ買いたいという人はいないでしょうから、漁場の価値を下げる意味で漁業権の侵害になります。

罰金は20万円ですが、散骨によって実害や風評被害が発生した場合は、多額の損害賠償が発生する可能性が高いので、事前の確認を強くおすすめします。
沿岸地域によって異なりますが、通常漁業権が設定されている場所は岸から2~3キロ、遠いところで5キロくらいまでとなります。

漁業権は都道府県の農林部や水産課で確認することが出来ます。
たとえば神奈川県であれば商業地区や工業地区を除くと、すべての沿岸に漁業権が設定されています。

各自治体ごとに漁業法を補完する条例や規則を設けている場合もありますので、併せて確認すると良いでしょう。

刑法

散骨が刑法に関係してくることは、余程のことがない限りありません。
関係する法令は死体損壊罪で、散骨に関わる言葉としては死体遺棄が良く聞かれると思います。

刑法第190条 死体損壊等
死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、三年以下の懲役に処する。

遺骨が入ったままの骨壺を捨てたり置いて来たりすると、この刑法190条の遺棄に該当しますし、遺骨をゴミとして捨てることも遺棄にあたります。

実際に、コインロッカーに骨壺を入れたまま放置したり、妻の遺骨を公衆トイレに流すなどして逮捕される事件が過去に起きています。

ただ、みなさんは遺棄するわけではなくルールを守った散骨です。
散骨業者が勝手に散骨場を作ったことで逮捕されることはありましたが、個人が散骨をして逮捕されたという話は聞いたことがありません。

ひとまず刑法のことは気にしないでも平気でしょう。

条例とガイドライン

都道府県や政令指定都市では、独自に散骨に関する条例や規定を定めている場合があります。

他のいくつかのサイトに書かれていたことですが、このように紹介されているものがあります。

熱海市では陸から10キロ離れた海域で散骨しなければならい条例があります。

確かに熱海市は散骨場の許可に関する条例を公布しましたが、陸から10キロ離れた海域にしなければならないという条例はありません。
「陸から10キロ~」という文言が出てくるのは散骨を事業として行っている業者に向けたガイドラインに掲載されています。

ガイドラインは指針であり罰則のある条例(法令)ではありませんし、みなさんが個人的に行おうとする場合は当てはまりません。
こういうもっともらしい間違いにはご注意ください。

条例まとめ

 

この記事の作成(更新)時点での各自治体の条例は別記事にまとめてあります。
散骨業者さん向けのものが多いのでそれらは省略していますが、自分の散骨しようとしている地域や海域になにかの規制があるか気になる方は参考にしてみてください。

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業者さんの多くは東京湾

散骨を代行して、海に遺骨を散骨してもらう場合の散骨先は東京湾がほとんどです。
散骨業者の多くが東京や千葉に位置していることもその理由のひとつと思われますが、商業船の航路になっていて沿岸地域が工業地帯でもある東京湾内は漁業権の心配がほとんどないということもあります。

さらに特別区である23区それぞれの管轄する海域が入り組んでおり、それぞれの区が連携して規制を(するとしたら)しないと意味がないという背景も見受けられます。

みなさんがご自身で散骨する場合、漁業権がもっとも大きなハードルになると思いますので、全国の漁業権を近いうちにまとめてみようと思います。

 

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