50年以上前から7割超が無宗教
自分や家族に特定の宗教・宗派がない無宗教、あるいは無神論者など宗教に興味がない人の割合は平成25年の調査(統計数理研究所)で全国平均72%に上ります。
50年前にあたる、昭和43年の調査でも70%の人が宗教に興味がないと回答しています。
年を取るごとに信心深くなる
宗教を信じないという人の割合は平均7割ですが、年代別で見ると20代の9割弱は無宗教であることが分かります。
一方、70代以上の人は4割以上の方がなにかしらの信仰心を持っていると回答しています。
お気づきの方もいると思いますが、これは昔の人だから信仰心があるわけではなく、年齢を重ねるごとに信仰心を持つようになるのです。
なぜなら冒頭のグラフの昭和43年以前、すなわち今70歳以上の方々が20代だった頃の信仰心を持っていない人の割合は、現代と変わらず約7割だからです。
親の死を味わい、自分自身の死が近づいていると感じ始めることで何か悔い改めるからなのか、あるいは心の充足のためなのか理由はそれぞれだと思いますが、30代40代から20ポイント以上も上昇するのには大きな変化があることは間違いなさそうです。
しかし、信仰心が芽生える70代以上の人があの世を信じるかというと別の話のようです。
天国と地獄
20代で信仰心がある人は13%にとどまりましたが、天国や極楽浄土といったあの世があると考えている人の割合は4割を大きく超えます。
反面、信仰心が厚くなってくるという70才以上では、約3割しか天国などのあの世を信じていません。
70才以上の人は「あの世」の存在を気にしなくなるが、仏の教えを学び日々を大切に生きようという表れのように思います。
宗教が身近にない20代の人からすれば、墓参りや初詣が宗教儀式という考えはないでしょうから、死んだら天国と地獄があって、墓参りなどはイベントという感覚でしょう。
そしてこのイベントという感覚が、仏式葬儀9割という異常な事態を引き起こしています。
葬儀はイベント
日本の火葬率はほぼ100%。
仏式葬儀の割合は調査元によって若干異なりますが、おおよそ9割前後です。
その他、神式・キリスト教式などがありますが、無宗教として葬儀を行った割合はわずか2%~3%となっています。
みなさんは初詣や墓参りに行くでしょうか。
「行く」と回答する人は70%を超えています。
墓参りは仏教儀式ですが先祖を敬うひとつの慣習として定着していますし、初詣は神社とお寺の区別なくお参りしているのではないでしょうか。
この神社とお寺の区別なくということを考えると、多くの日本人が仏教や神道のこだわりなく一種のイベントとして行動していることが伺えます。
そして人生最後のイベントとして葬儀がありますが、現在そのほとんどが仏式なのは手順が分からないことと選択する余裕がないことが大きな理由になっています。
(檀家制度などの歴史的背景以外で)
はじめての葬儀
自分自身が喪主や喪家となって葬儀をする機会は多くありません。
1人目の子はどうしていいか分からないことだらけな子育てに似ています。
初めての葬儀は悲しむ暇がないと言われるほどバタバタとし、右も左も分からず過去に列席した葬儀を思い返してみたり、お寺や葬儀会社の流れに任せてみたりすることが多くなり、結果仏式になるわけです。
(そして故人の宗派やお布施の額について調べ始めるという流れです。)
2人目の子の方が楽(手抜き?)に感じるように、2回目以降の葬儀はこだわりを持ったり、逆に簡素にしたり、無宗教にしたりと選択肢が広がります。
しかし、はじめての葬儀が仏式の場合、次も同じというのが楽です。
費用の問題がなかったり、はじめての葬儀に満足している場合はそれで良いでしょう。
無宗教で葬儀を行おうとしたら、またはじめての経験になってしまい手順が分からないからです。
無宗教の葬儀
無宗教で葬儀を行うことに難しいことはありません。
なぜなら「花」も「焼香」も「僧侶」も「通夜」も不要だからです。
ルールは自分で決めればいいのです。
焼香に使う香も、花も、仏教において場を清めるための仏具です。
花はあったほうがいいとは思いますが、故人の好きだった音楽を流したり、写真や映像を使うのもみなさん次第です。
通夜や告別式を終えた後の別日に行うお別れ会のようなものをしようとする場合は、自由度が高い分準備が多く、費用も仏式で行うよりも高くなることが多いので大変です。
しかし通夜や告別式に代えて行う場合は、30万円からが相場と言われる僧侶へのお布施がそのまま不要になりますし、その後の四十九日・1周忌以降の法要も不要となります。
式の流れはセレモニーホールや斎場のスタッフが無宗教の葬儀に慣れていますから、遠慮せずに聞いてみるのがおすすめです。
たいていは以下のような流れで行います。
●開式
司会者がいれば開式をアナウンスします。
お経がありませんので、ここから音楽・映像を流します。
●献花
焼香に代えて献花を行います。
献花台を設けるか、棺に直接いれます。
●歓談
通夜振る舞いに相当する部分です。
寿司に限らず、好みの食事を用意してください。
●挨拶
遺族の代表者から参列者に御礼のあいさつをします。
●閉式
葬儀を終わります。
無宗教の葬儀で気を付けたいこと
まず参列者は仏式であるという前提で来訪します。
そのため、受付の時点で無宗教の葬儀であるという周知が必要になります。
中には敬虔(けいけん)な信者の方もいて、自分の宗派に則った作法で故人の冥福を祈ってくださいますので、そういう方が来たときのみ香炉をお出しするなどもすることができます。
また手を合わせて拝むという行為も仏式ですが、参列する方の自由にしてもらえばいいですし、数珠を使用することの制限も必要ないと思います。
無宗教ですから、香典袋の表書きが御霊前でも御仏前でもお花料でもなんでも問題ありませんが、事前に招待するお別れ会のような形式であれば会費制が一般的です。
そしてもっとも気を付けなければならないことは、お寺にお墓がある場合です。
ご自身が無宗教であっても、お墓または納骨堂に遺骨を納めてもらうためには、そのお寺の住職にお経をあげてもらうことが必要な場合が往々にしてあります。
最悪の場合、再度葬儀を執り行わなければならないこともありますので、十分注意・確認をしてくだい。
無宗教ならお坊さんは不要
結婚式がキリスト教式なのが多いように、葬式は仏式で行うことが慣例になっていますが、昨今の結婚式がレストランを貸切ったり高原で行うパーティスタイルが増えているように、葬儀についてもなんの決まりもありません。
ただ、みんながやっているから安心というだけなのです。
お坊さんも葬式も仏式、仏教に則ったものです。
お坊さんにお経をあげてもらわないと成仏できないのなら、キリスト教徒やイスラム教徒はどうなってしまうのでしょう。
成仏という考え方も仏式ですし、四十九日までは霊体のままでいるという考えにいたっては仏式というよりも日本の一部の宗派だけの考え方です。
みなさんが無宗教なのであれば、葬儀にお坊さんは必要ないのです。
葬儀はビジネス
少し前までは、納骨堂も散骨もあり得ないという世論が大勢を占めていましたが、今では多くの人が許容しています。
なぜならそこにビジネスチャンスがあり、すぐに広まったためです。
仏式ではない無宗教の葬儀が広まらない理由は、ビジネスチャンスが無い、今と比較して利用者以外誰の得にもならないからだとわたしは考えています。
檀家制度が崩壊し、寺の収入を補うためにいち早く納骨堂を作りだしたのはお寺です。
お墓を維持できない、後継ぎがいない、お墓を持たないという時代や環境の変化で散骨業者・散骨代行業者が生まれました。
どちらも収益が確保できると想定して始まっているサービスです。
無宗教で葬儀をすることが常態化したらどうでしょうか。
・僧侶・お寺の収益は悪化します。
・お坊さんを紹介している斎場、紹介会社の手数料収入が減ります。
・葬儀場に出入りしているの仏具レンタルや寿司屋の収入も減ります。
・位牌、仏壇を販売する業者の売上も減ります。
・回りまわって墓石を扱う石材店の経営も悪化します。
みなさんの葬儀費用の総額が安くなる以外、多くの業者にとっては何の得もないのが無宗教での葬儀なのです。
冠婚葬祭事業会社をスポンサーに持つテレビ局が大きく扱うことはないでしょうし、宗教と政治は切っても切れない関係ですから、わざわざ蜂の巣を突くようなことはしません。
少しずつ無宗教の葬儀を選択する人は増えてくるとは思いますが、無宗教で葬儀をすることが大きなビジネスチャンスにならない限り、今後一般化することはないでしょう。